こんにちは、エグゼクティブコーチの、野中(のなさん)です。今日のテーマは「自己否定しがちメンタル」についてです。経営や自己成長をテーマにしていると、多くの方が抱くのが「どうしてもっと早く気づけなかったのかな…」「いまの自分はまだまだダメだ」という“いまを否定する思い”です。実際、経営者やビジネスパーソンにとって、「目標」と「現状」のギャップを埋めようとする姿勢は大切です。しかし*「今が最善」とはとても思えず、未来や他者と比較して自己否定に陥ってしまう*――その状態から抜け出せずに苦しくなっている方も少なくありません。けれど視点を変えれば、「いま気づけたからこそ意味がある」「過去があったからこそ、このタイミングでベストなインスピレーションが降りてきた」という捉え方もできるわけです。今回は、そんな「いまが最善と思えない」ときこそ見直したいポイントをQ&A形式で深掘りしていきます。途中で登場する事例は、あくまで一般化したもの。どの業界・企業の特定情報も含みません。ぜひご自身の状況に置き換えて読んでみてください。Q1. なぜ多くの人は「今が最善」と思えずに、「もっと早く気づければよかった」と後悔するの?A1.一言で言うと、「過去や未来と比べて、いまに価値を感じられない」からです。典型的なパターンを挙げると、以下のような思考が多いでしょう。他者との比較「同じ時期に起業したAさんは、もう〇〇が成功しているのに自分はまだ……」という形で、他社・他人と比べて“出遅れ感”に苛まれる。すると「いまの自分はダメだ」「もっと早く動けばよかった」と思いがち。理想の未来とのギャップ経営者は目標を高く設定しますが、その目標と比べ「今は課題だらけ」と考える結果、現状を「まだまだ」と捉え「もっと早く手を打てたはずだ」と振り返る。“気づき”に対しても後悔してしまうなにか重要な学びを得ても、「3年前に知ってたらもっと早く成果が出たのに…」「あのときからやってれば、いま頃○○だったかも」と過去を悔やむ。本来は素晴らしい発見のはずが、後ろ向きな感情で塗りつぶされてしまう。これらは「能力・知識は早く身につけるほど得」という、直線的な発想によるもの。さらに、自分と他者を比較する社会風潮も拍車をかけ、「過去に気づけなかった自分」を責めがちになるんですね。Q2. 「いまが最善だよ」と言われてもピンとこない…どうしてでしょうか?A2.“いま”を否定してきた人ほど「いまが最善なんて楽観的すぎる」と感じるかもしれません。主な要因は以下です。過去へ執着「あのときにああしていれば…」「なぜあの瞬間に行動しなかった?」という後悔は、過去に対する執着が強いサイン。 結果、「もしもっと早く気づいていれば、今ごろ違う未来があったのに」と、いまの状況を素直に認められない。未来への不安「今はまだ不十分。もっと完璧な状態にならないと、この先大変なことになるかも」という漠然とした焦り。 「今が最善」と認めたら、努力をやめてしまいそうで怖い、という心理がある。競争・優劣の価値観どこかで「周りより遅れをとったら負け」「スピードこそ命」と思っていると、「のんびり今を受け容れるなんて…」という感覚が生まれる。 しかし経営は短期決戦だけではなく、長期的なビジョンや自分のペースも大切。そこを見落としがち。過度な完璧主義「これを達成するには今は足りない。もっと準備しなきゃ」と常にアップデートを求める一方、「いつがベストなのか?」を見失う。 結果、「今」が肯定しづらくなる。「今が最善と思えない」のは、悪いことではありません。課題を感じているからこそ進化を求める意欲が高いというポジティブな側面もあるのです。ただ、それにとらわれすぎると“いま”が苦しくなり、行動力を削がれてしまうこともあります。自分の意識が「重く、苦しく、固く」なってしまうと、本当は良い行い、良いビジネスをしようとしている人が自分を責めることにエネルギーを使ってしまい、行動力が減ってしまうのはもったいないですよね。Q3. それでも「もっと早く気づきたかった」という気持ちは消えないんだけど?どう捉え直せばればいい?A3.“いま気づいた”ことを素直に喜べず、「もっと早く…」と後悔してしまうのは、人間として自然な反応。ただ、大切なのはそれをどう捉え直すかです。過去は「いまへの布石」だったと認めるあなたがそのタイミングで学んだ理由が必ずある。 過去の経験がなければ、いまの気づきは生まれなかったと考えてみる。すべては「最善の流れ」で来ているという仮説スピリチュアルな見方をすると、過去生からの蓄積や周囲の出来事が重なり合って“今ここ”にベストな気づきが訪れた、という考え方もある。 信じるかどうかは人それぞれだけれど、“結果的にいまだから腑に落ちた”のは事実かもしれない。他社や他人と比較して落ち込んだりしやすい人は、「人それぞれ成長のタイミング・スピード・ストーリーが異なる」という当たり前だけど忘れやすい本質も思い出すといいと思います。「いま気づいた」のは未来を変えられるスタート地点「あと5年早ければ…」と嘆いても、その5年前に気づくシナリオは現実には起こらなかった。 むしろ“いまからどう活かすか”を考えれば未来は十分に変えていける。 これを真剣に受け止められる人は“今”が輝き始めるんです。大事なのは、どんな時も「今」です。Q4. 「今が最善」だと思うと、努力しなくなるのでは?A4.これは意外と多い誤解です。「今が最善なら頑張る必要ない?」って捉えてしまうと、前進しなくなりそう…と思う方もいるでしょう。でも、実際は真逆。いまが最善と肯定するほど、むしろ行動しやすくなります。理由1:自分を責めずに済むのでエネルギーが高まる現状を否定するとき、人は無駄に心をすり減らします。 いまが最善と思えれば「じゃあここからもっと面白くするには?」という発想になりやすい。理由2:短期的な焦りが減り、長期目線で動ける「焦らない」と「努力しない」は別物。 焦りで無理をすると長続きせず挫折しがち。一方“いまがベスト”と落ち着いていられる人は、長期計画で地道に積み上げて結果的に大きく伸びる。理由3:自己肯定感が高まり、自然に“好き”なことへ動ける「やらなきゃ…」の義務感からの行動より、「いまの自分にも価値がある」と思える人の行動は、創造性が高くなりやすい。 結果として、努力の質が上がり、周囲を巻き込む力も大きくなる。Q5. 経営者にとって「今が最善」はどう役立つの?A5.経営者は日々決断と行動が求められ、現状への課題感も強いです。そんな人こそ“いまが最善”を意識すると、次のような効果が見込めます。不安や焦りが軽減し、ブレにくい判断ができる「このままじゃまずい!」「もっと急がなきゃ!」と思い込みすぎると、短絡的な決断をしてしまう危険性がある。 いまを肯定的に捉えられると、落ち着いて冷静に判断できるようになり、大局観を持ったリーダーシップが発揮しやすい。チームとのコミュニケーションが柔らかくなるリーダー自身が“まだまだダメ”と思っていると、周囲にも否定的な言葉が増えやすい。 「いまこの状態だからこそ、次に行けるよね」というスタンスなら、チームも前向きに動いてくれる。創造的発想につながる「足りない状態を補う」発想ではなく、「いま十分ベースがあるから、さらに面白いことができる!」という思考にシフト。 新規事業やコラボ企画など、“プラスを足す”発想が出やすくなる。Q6. 今が最善を信頼する3つのポイント――まとめて教えてほしいA6.では、具体的にどうすれば“いまが最善”を実感できるか、3つのキーポイントを簡潔にまとめます。「わたしは過去に必要なことを全て学んできた」と宣言する朝起きたら1分、「今の私には過去のすべてが集まっている。だからこそ最善のスタート地点にいる」と意識づけする。 これは潜在意識の再プログラムに役立ちます。「人生長期でみたら、どんどんよくなっていく」と決める。長期視点で捉える“今”いまの状態を断面で見るのではなく、人生トータルでの連続点だと捉える。 波はあって当然、紆余曲折してもトータルで成長していればOK。「問題も含めて学びの種」と考え、いま起きる出来事を受け入れる。「人生長期でみたら、どんどんよくなってる」と決めるのが先で、そうしたら今、今日の一瞬一瞬も紆余曲折あってもそれらがベストなタイミングで起きてるはず、ここから学べることがあるはず、わざわざこのタイミングで何か学べることがあるはずという視点に立ち返りやすくなります。直感と違和感に敏感になる「ん? なんか変だな」「これはワクワクするぞ?」といった感覚を常にキャッチ。 いまが最善と信じられないとき、たいてい“違和感”を無視して突き進んでいることが多い。 逆に違和感に気づけば、次の行動を微調整でき、結果的に最善の道に戻りやすい。Q7. 「いまが最善」という意識を本気で取り入れた結果、どんな変化が起こる?A7.たとえば、実際に経営者の方で「今が最善」と受け止めるスタンスを試してみた人たちは、こんな声をあげています。(あくまで一般化した例です)CASE1:「突発的なトラブルが起きても『これも何かのシグナルかも』と落ち着いて受け止められるようになり、短期的な大慌てが減った。」CASE2:「チームに対しても『いま、この状態だからこそ次に行ける』と言葉がけが変わり、メンバーの自己否定が減って雰囲気が良くなった。」CASE3:「自分の過去が活かされていると実感するにつれ、新しい学びにも積極的になれた。『いまに意味がある』と信じると、マインドが軽くなる。」特に「いま気づけたことは最善」「何でも早ければいいというわけじゃない」と開き直れた瞬間、“過去の自分”を責めるエネルギーが大幅に削減されます。そのぶん、未来を楽しむ余白が増えるというわけですね。Q8. それでも「今が最善?」と腑に落ちないとき、どうすれば…?A8.無理に納得しようとしても逆効果な場合があります。そんなときは以下のステップを試してみるといいでしょう。「いまはモヤモヤしている自分」をまず受け止める「いまが最善って言われてもピンとこない…」その正直な感情を否定しない。 「いまは腑に落ちなくても、それにも意味がある」と考えてみる。小さな成功や学びを振り返り、「あの時はあの時でベストを尽くしてたな」と確認する些細な例でもOK。過去に何かうまくいった出来事を思い出し、「あれは結局、タイミングバッチリだったな」と感じてみる。誰かに話す(コーチ・仲間・信頼できる友人)一人の頭の中だけで“いま”がいいか悪いかをジャッジすると堂々巡りに陥る。 他者と対話することで「ん? あなたのそれって、むしろいい状況じゃない?」と客観的に気づかされることがある。一定期間だけ“今が最善”前提で行動してみる「騙されたと思って、1週間このスタンスを試そう」という感覚で小さなアクションを起こす。 “今がベストだ”と自分に許可を与えたうえで、普段避けていた行動をとってみると、新たな発見があるかも。まとめ:どんな時代の自分もベストを尽くしてきた。だからこそ、いまが最善。最後にもう一度、本記事のポイントを要約します。“今が最善と思えない”背景には、過去への後悔・未来への不安・他者比較・完璧主義などがある。もっと早く気づけば…という思いは自然だが、過去にもちゃんと意味があり、いまこのタイミングだからこそ腑に落ちる学びがある。今が最善を受容したほうが、実は努力しやすくクリエイティブな発想を生みやすい。経営者こそ、目先の課題だけでなく『いまもベスト』『目標達成した未来や、その先の未来も楽しみ』という長期的・肯定的な視点が必要。腑に落ちなくてもOK。コーチや周囲と対話しながら、1週間ほど“いまが最善”モードを試してみると意外な気づきがある。何度でも言いますが、“いま”を思いっきり肯定できるようになると、「過去なんて何の意味もなかった」と軽視するわけではなく、むしろ「過去があったからこそいまなんだ」と自然に思えるようになります。さらに「じゃあ、これからの未来もどんな展開になるんだろう?」とワクワクしながら行動できるんです。PS:私自身も、「もっと早く気づいていたら…」という呪いから解放された経験があります。僕は、NonaCanvasというコーチングの会社を2023年4月に立ち上げました。当初は、「インフルエンサー専門ビジネスコーチ」という肩書きで、インフルエンサーに特化したコーチングビジネスを展開していました。そして、1年半くらいの時間をかけて、2024年後半「経営者向けのエグゼクティブコーチ」に方向性をシフトしました。当初は「もっと早く経営者向けにスパッとシフトしたほうがよかったかな?」「最初から経営者向けにしていたほうがよかったかな?」なんて少し頭をよぎりました。でも、この紆余曲折があるからこそ「今が最善」って思えるんです。というのも、2024年の3月ごろ、ご縁があって経営者さんのクライアントが数名増えました。そこから「経営者向けにシフトするぞ!」と決断するまでに半年かかってますが、この期間、あれこれワクワクすることに手を出したからこそ方向性が軌道修正できたと思ってるんです。その間、何をしていたかというと「インナーモチベーション診断」という経営者向けの性格診断コンテンツを作って研究をしていたり、「YouTubeチャンネルを立ち上げて経営者さんと対談」してみたり、「経営者メンタル2.0」という書籍を書いていたりしました。そして、僕自身、自分の認識が「セッションを提供するコーチ」から、「研究者の側面も持つ、エグゼクティブコーチ」に代わりました。セッションだけ提供していたら幸せかと思っていた自分は、何かユニークなテーマで研究探究している時間も好きで必要だとこの半年で気づけたからです。ですからあなたも、ぜひ「いまが最善」という考え方を実験的に取り入れてみてください。そして気づきを得たら、その気づきを「いまだから得られたものだよね。ベストなタイミングでベストなスピードで成長できてるよね」と何度でも自分に言い聞かせてみましょう。“過去も未来もすべて連続しているし、いまがまさにベストなポイントにいる”というマインドは、経営だけでなく人生全般を豊かにしてくれるはずです。