コンシャス・キャピタリズムとは?──資本主義の先を行く「意識的経営」の世界観こんにちは、エグゼクティブコーチの、野中(のなさん)です。今日のテーマは「資本主義の新しい概念、コンシャスキャピタリズム」です。前回のブログ記事で「ハイヤーパーパス(高次の目的)」についてお話ししましたが、今回取り上げる*コンシャス・キャピタリズム(Conscious Capitalism)*は、同じ文脈で「経営者の意識」を軸に“資本主義”を変革する、興味深いキーワードなんです。「資本主義の仕組みに限界を感じる」「もう一歩先の発想を得たい」という経営者の方に、ぜひ知っていただきたい概念です。私自身も調べてみて、「ああ、これまで考えてきた“経営者メンタル3.0(愛情と感謝の循環)”と通じるな」と強く思いました。では、具体的にQ&A形式で見ていきましょう。スリーセンテンスサマリーコンシャス・キャピタリズムは、企業の利益追求と社会への貢献を両立させようとする経営哲学で、「高次の目的」「ステークホルダーの統合」「意識的リーダーシップ」「意識的な企業文化」から成り立つ。従来の資本主義と異なり、株主だけでなく社員や顧客、地域社会など“すべてのステークホルダー”を大切にすることで、長期的かつ持続的な成長が期待できる。経営者自身が意識をアップデートすることが鍵であり、ロジカルな方法論だけでなく“愛情や感謝の循環”を生む視点を取り入れることで、社会を巻き込みながら企業を飛躍させる可能性が高まる。ざっくり図解こちらQ1. コンシャス・キャピタリズムって何ですか?A. コンシャス・キャピタリズム(Conscious Capitalism)とは、「企業が単に利益を追求するだけでなく、社会やステークホルダー全体により良い価値をもたらすことを経営理念として掲げる考え方・運動」のことです。ビジネスと社会的な目的を両立させることで、長期的・持続的な成長を目指そうとするのが特徴。つまり、「利益は悪じゃないけど、株主だけじゃなく社会全体が幸せになれる経営を意識しよう」という発想ですね。※直感的に理解しやすくあえて崩した言い方をすると「自社の利益追求*社会視点」の両方を意識する、「意識高い系資本主義」みたいな感じです。コンシャスの単語自体は、思慮深いとか、意識的という意味がありますね。何に意識的なのか?という対象がお金や利益だけじゃなく、社会や地球といった広い視点まで意識している点が違いですね。Q2. 誰が提唱したの? なぜ注目され始めた?A. 米国のホールフーズ・マーケット共同創業者ジョン・マッキー(John Mackey)と学者のラジ・シソディア(Raj Sisodia)が中心となって広めました。ジョン・マッキー氏は著書『Conscious Capitalism: Liberating the Heroic Spirit of Business』の共著者でもあり、企業経営の成功例(ホールフーズを大企業に育てた)をもって、この理念を説得力ある形で世に示したんです。格差拡大や環境破壊が顕在化し、「株主利益最優先」の資本主義に限界を感じる人が増えた今、*“意識を持った資本主義”*へのニーズが高まり注目されるようになりました。Q3. 普通の資本主義と何が違う? どこに特徴があるの?A. 従来の資本主義は「企業が利益最大化を目指せば、それが社会の豊かさにつながる」という理屈でしたが、現実にはその歪み(格差、環境破壊など)が大きくなってきた。コンシャス・キャピタリズムは以下の4つを柱にして、そうした歪みを是正しようとするものです。Higher Purpose(高次の目的) 企業が“何のために存在するのか”を明確にし、利益はあくまで結果。社会的・地球的な使命を中心に据える。Stakeholder Integration(ステークホルダーの統合) 株主だけでなく、社員・顧客・地域・環境など、あらゆるステークホルダー全体が発展し合う関係を築く。Conscious Leadership(意識的リーダーシップ) 経営トップが高い倫理観と自己認識を持ち、組織を導く。利他性や愛情でメンバーを巻き込み、可能性を引き出す。Conscious Culture & Management(意識的な企業文化・経営) 社員が主体的に動き、創造性を発揮できる文化を醸成し、社会に貢献する企業として継続成長を目指す。Q4. どんな会社が取り入れているの? 実例はあるの?A. ホールフーズ・マーケットが代表例ですが、ほかにもパタゴニアやスターバックスなど「社会や環境へ深く配慮しつつ、ビジネスとしても成功」している企業がしばしば挙げられます。パタゴニア: 環境保護を核に掲げ、顧客や社員にも「地球を守る」という思想が浸透。スターバックス: 社員を“パートナー”と呼び、地域コミュニティやサプライチェーンとの関係を大切に経営を拡大。単に「寄付しましょう」とか「社員満足を高めましょう」というCSR的な発想ではなく、企業活動そのものを“高次の目的”に根差すことで、長期的にブランドや財務面でも成果を出しているのが特徴です。※野中解説:事例が大きすぎると、「ああ、そっち側の話か」と自分に関係のない世界の話と思ってしまいやすいですが、そう捉えてしまうとちょっと勿体無いです。私としては、「数字ゲーム」になりすぎた資本主義のカウンターの動きとして見てます。結局人間は地球に住む、社会や自然と調和する存在の1つでしかない。どう地球や社会と調和していくのが経営者にとっても会社にとっても自然体なのか?という当たり前の視点を取り戻す持続発展可能な資本主義の形としてみてます。そして、それは「環境問題に配慮しましょう」という表面的な話ではなく、「いかに社会や地球と調和するのか?」というもう少し大きな枠組みを意識することが上位にある概念になるという話ですね。これらはお金という数字しか見てないと見失いやすい視点だからこそ「コンシャス=意識的」という言葉が使われているのだと見ています。Q5. メリットは? “意識的経営”をすると何が良いの?A. 大まかに言うと以下のようなメリットがあります。ざっくりイメージするなら「いい感じの調和を保ちながら持続発展しやすい」って感じで捉えておくといいと思います。この「いい感じ」というのは経営者にとっても、社員にとっても、社会にとっても、地球にとっても、株主にとっても、、、と、誰から見ても「いい感じ」であるというのが大事です。誰かが誰かを責めたり、誰かが自己犠牲的になっている構造ではないという全体の調和がポイントです。社員のモチベーション・定着率向上 社員が「自分たちはただの金儲けじゃなく、社会へプラスを与えている」と思えると、やりがいや誇りが高まり、生産性もアップ。ステークホルダーからの強い支持 顧客や取引先が“応援企業”として愛着を持ち、リピートやロイヤルティが高まる。長期的な安定・持続可能性 社会からの支持が厚く、環境リスクへの対処も進むので、企業が時代に合わせて柔軟に進化しやすい。経営者自身が疲弊しにくい 「高い目的」や「調和」を重視すると、利己的な数字競争だけの経営よりも、精神的に健全さが保たれやすい。※野中解説「何かを犠牲にしないと成長・成功できない」「成長・成功するためには苦労しないといけない」経営者自身のそういう意識をなくし、全体の循環を良くすることが、自然体でいい感じの経営をするためのコツなのだと見ています。経営者が疲弊しにくいという4つ目のメリットを享受するためには、経営者が自己犠牲的な姿勢や思い込みを手放さないとこのコンシャスキャピタリズムの流れや思想には行くことはできないでしょう。Q6. デメリットやマイナス面はないの?A. いくつか考えられます。特に4番目が一番大きいと思います。短期利益とのバランス 高い目的やステークホルダー重視に取り組むと、短期的にはコストが増えたり利益率が下がる恐れ。株主との板挟みになるケースも。理念の形骸化リスク ただ看板に掲げるだけで実践が伴わないと、「きれいごと言ってるだけ」と社内外から反発を招く可能性がある。全ステークホルダーを満足させる難しさ 理論上は誰もがWin-Winを目指すが、利害が対立する場面では調整が大変。経営者のリーダーシップが試される。経営者自身のマインド面の器が試される「地球を意識するなんて馬鹿馬鹿しい、壮大すぎだよ」「まずは自社だけ儲かればいいんだよ、ていうかそんなに社会的影響まで意識する余裕なんてないよ」「日々のMTGや意思決定で大変なのに、どこまで頑張ればいいの?」そんな声が聞こえてくるかもしれません。そうやって、コンシャスキャピタリズムなんて、、、と思って遠ざけるようだと、これを意識することは難しいでしょう。つまり、コンシャスキャピタリズムを意識できる、気になること自体が、ある意味次のステージに進める経営者のマインド面の器があるということなのです。逆にいうと、この新しい扉を開くためには「その手前の課題をある程度クリアしておく」必要があるということです。そういう意味で「全業態、全フェーズの経営者全員が意識すべきである!」とは私も思っていません。Q7. わたしたち経営者にとって、知るメリットって何?A. 端的に言うと、*「次の意識ステージへ進むきっかけ」*になるかもしれません。これまで数字を伸ばすロジックばかり考えてきて、「なんだか停滞している」「新しい突破口が見えない」と悩む時期ってありますよね。コンシャス・キャピタリズムの視点を取り入れると、「企業って社会の一部なんだ」「全員がハッピーになるやり方で成長したほうが長期的にいいんだ」「自分自身も社会や会社の一部なんだ。自分が自己犠牲的になっていたり、苦しい経営をしていたら、全体のエネルギー循環が滞ってしまうんだ」と気づき、経営スタイルをアップデートできます。私が提唱する*“経営者メンタル3.0”とも親和性が高く、「全ステークホルダーの間に感謝や愛情の矢印を生み出す」*というエネルギー循環や自然体にいい感じな経営と非常に近い発想。経営者の内面も安定しやすいから、業績もプライベートも好転する事例が多々あります。ロジカルに売上や利益を追求するやり方で「経営者としての成長の臨界点」を迎えてしまっている人が、次に進むための扉になり得るとして私は見ています。Q8. 地球視点って言われてもピンとこない。どんなエネルギー循環を意識すればいい?A. ポイントは「自分や企業が“利益を得る”だけで終わらず、そこで生じた価値や利益をどう“循環”させるか」を考えることです。たとえば、社員に還元したり、地域社会の育成に回したり、環境保護に役立てたり……。愛情や感謝を“自分→社員→顧客→地域社会→自分”と循環させるイメージを持つだけでも、具体的な施策のヒントが見えてくるんです。単に「地球に良いことをしよう」と言うより、経済活動で生まれた収益やエネルギーを広く循環させることで、会社も継続的な成長が得られるという発想が大事ですね。Q9. コンシャス・キャピタリズムが広がるとどうなる? 広がらないとどうなる?A.広がる場合: 企業が競合するのではなく、互いに社会課題解決や顧客満足度向上で協力し合い、長期的・持続的に発展しやすくなる。格差や環境破壊も緩和されていく。広がらない場合: 依然として短期利益最優先の企業が多く、社会問題を無視してビジネスを進めることで、いずれ市場や顧客からの信頼を失い、ビジネスリスクが高まる恐れ。Q10. コンシャス・キャピタリズムの本質が「調和」だと思う理由と、 なぜエグゼクティブコーチングが有効なの?A.調和: 私は、「企業が社会やステークホルダーと“相互に恩恵を与え合う”関係を築くこと」が、コンシャス・キャピタリズムの核であり、本質だと思います。それは、「企業がどう社会と調和し、持続発展していくか?」に対する答えでもあります。利益も社会価値も両方高め合うイメージです。エグゼクティブコーチングの役割: 経営者がこの「調和」の視点を本気で取り入れるには、自分の内面を客観視し、固定観念や短期思考を乗り越える必要があります。実際、私自身もコーチングを受け続けて意識変容が起き、「外側の数字や株主だけに気を取られない経営スタイル」を確立したことで5年で業績を十倍に成長させた経営経験を持ちます。コーチングでは、経営者が本音のビジョン・使命を言語化し、組織の利害も整理しながら「じゃあどう行動する?」と具体化していくので、“コンシャスキャピタリズム”を実装するプロセスをスムーズにできます。まとめ:意識をアップデートし、資本主義をアップグレードするコンシャス・キャピタリズムは、「社会や地球への配慮」と「企業の収益成長」が矛盾せず、高次の目的(Higher Purpose)を軸に両立できるという経営哲学です。それには経営者自身が“意識的”であることが鍵。自分の内面を整え、全ステークホルダーとの関係を愛情と感謝で繋ぎ直す視点が不可欠です。ちょうど私が提唱する*「経営者メンタル3.0」*(全ステークホルダーの間に愛情・感謝の矢印を張り巡らす)と合致する部分が多く、私もますます興味を持っているんですよね。もし「ロジカルに数字を伸ばしてきたけど、そろそろ限界感」「もう一段、経営者として成長したい」という思いがあるなら、コンシャス・キャピタリズムをキーワードに、「ビジネス×社会や地球との調和」を統合する経営スタイルを検討してみてください。PS:私がコンシャス・キャピタリズムを知った理由実はこの「コンシャス・キャピタリズム」というキーワードに出会ったのは、わりと最近なんです。「経営者メンタル3.0」の解説記事を作る過程で、“愛情・感謝・調和”の経営を推奨している流れの中で色々調べていたら、「あ、すでに近しい概念あったんだ!」と目からウロコでした。つまり、新しい意識で行動すると、新しい扉が開き、そこから新しい概念や仲間と出会えるんですよね。多くの経営者は「どう売上を伸ばすか?」ばかりをロジカルに解決するゲームをしてきて、成長の限界を迎えることがよくあります。でもそこからさらに飛躍したいなら、“意識的に経営を変える”フェーズへ移行するのもアリだと思ってます。コンシャス・キャピタリズムを学ぶと「短期利益に囚われなくても、むしろ大きな成果が得られる」可能性に気づけますし、「地球視点って抽象的だけど、結局はステークホルダー全員が喜ぶ構造をつくるとリスクも減り、周りのサポートも得られる」という事例が多い。ただ、理念を立てるだけでは形骸化しがちで、「経営者のメンタルアップデート」を含めたエグゼクティブコーチングが重要と私は考えています。私自身が数年にわたりコーチングを受け、自分のマインドが変容することで経営インパクトを得られたからこそ、*“意識を変える”→“行動が変わる”→“成果が変わる”*というサイクルを多くの経営者に体感してほしいんです。あなたもピンときたら、ぜひ意識的経営=コンシャス・キャピタリズムの世界を一緒に探求してみましょう!参考文献John Mackey(ホールフーズ・マーケット共同創業者)https://www.consciouscapitalism.org/people/john-mackeyおすすめ記事2025年・新時代のリーダー論「経営者メンタル3.0」とは?〜愛情、感謝、調和がキーワード〜【メンタルケア】マイナス感情に揺さぶられてしまう経営者さんに「過去の自分への手紙」をおすすめする3つの理由とは?【音声】「前年比◎%成長にとらわれて、自分を見失う」エグゼクティブコーチRADIO/経営者あるある#002