こんにちは、エグゼクティブコーチの野中祥平(のなさん)です。普段は「売上UP」「新規事業の加速」「組織改革」など“攻め”の話題を語ることが多いのですが、今日はちょっと違う視点をシェアしたいと思います。テーマは、「守りの経営」です。実は、社会が刻々と変化し続ける今だからこそ、「守り」を全方位で強化し、変化の波とうまく調和していくことが持続的な発展には欠かせません。私も以前は攻めに集中していましたが、ある本との出会いを機に、守りを意識することで会社の成長がさらに加速したという経験をしました。その本がこちらです。『生き残る会社をつくる 「守り」の経営』(浜口隆則 著)発売:2021年10月21日Amazonリンクタイトルには「生き残る会社」とありますが、実際には“潰れない”だけではなく、「いかに社会と調和しながら、よりしなやかな経営体質をつくるか」という大局的な示唆がたくさん詰まっています。今日は本書が、停滞中の経営者や、成長中の経営者両者にとって重要であるという話を、私自身の経験を交えながらご紹介します。スリーセンテンス要約社会の変化に合わせて柔軟に経営を続けるためには、「分散」「備蓄」「流動性」の3つを柱にした全方位的な“守りの経営”が不可欠。「穴があったら埋める、モグラ叩き発想の守り」ではなく、「一点突破ではない、全方位的な守り」を意識できると、経営は加速しやすくなる。私自身、2ヶ月の育休を取っても経営が止まらなかった経験から、守りはむしろ「攻めの加速を支える土台」だと強く実感。■この本はどんな本か?ざっくり紹介■攻め本が多い中で、なぜ“守り”なのか?著者・浜口隆則さんは、起業家や中小企業の経営支援に長年携わっている方です。世の中には「攻めのノウハウ」を解説した本がたくさんありますが、この本は「変化し続ける社会と調和しながら、どうすれば企業が持続発展を続けられるか」を具体的に教えてくれます。“守り”と聞くと、「失敗しないためのリスク回避」ばかりが連想されるかもしれません。でも本書が伝えたいのは、社会や人の流れを上手に取り込むための土台づくり。一時的にトップラインを伸ばすだけではなく、長期にわたって企業を「成長しながら存続させるためのポイント」を丁寧に紐解いてくれる一冊です。■攻めは一点突破でよくても、守りは全方位的本書で特に印象的な一節がこちらです。「攻めは1点突破でも可能ですが、守りは違います。守りは全方位的であり、全体を把握していないとできません。だから経営を知っていないとできないのです。」つまり「どこか1カ所に注力すれば売上が伸びる」攻めの発想とは違い、「守り」は組織・財務・サービス品質・取引先…すべてに目を配る必要がある。その全体像を見誤ると、突然大きなリスクが顕在化してしまう——ということです。これを読んだ時、私は「確かに、攻めは勢いとアイデアで突っ走れるけど、守りは一筋縄じゃいかない」と痛感しました。■全体を有機的につなぐ3つの守りキーワード本書では、「分散」「備蓄」「流動性」という3要素が繰り返し強調されています。「うわ、確かにこのキーワードで経営できてなかった!」「無意識的に穴があったら塞ぐことはしてたけど、この視点で対極的に守りを強化できてなかった!」という気づきが得られるはずなので、簡単に紹介します。分散顧客層や取引先を絞りすぎないサービスや役割も極端に一点集中させすぎない。いざという時に“逃げ道”があると会社が生き残りやすくなる。備蓄しっかり利益を確保し、次の投資や予備費に回せるようにする「今期の売上UP」だけでなく、将来的な価値を生む“資産”を増やし続ける余裕を持つことでリスクが起きても倒れにくくなる。流動性組織や資金をできるだけ“動かせる”状態に保つ社会や市場の変化に柔軟に順応できる“身軽さ”を大切にするガチガチに固定化しすぎると環境変化に対応できず、一気に苦しくなる。この3つは私がよく言う“攻め方”の話と一見真逆に思えるかもしれません。しかし逆に言えば、ここを固めることで“攻め”が加速していくというのがこの本から得た大きな気づきです。■この本を読んだからこそ、起きた人生の変化とは?■前年比150~200%成長中にこそ、守りを仕込んで“持続発展”へ私がこの本に出会ったのは、SNSマーケティングを事業領域とする上場企業「トレンダーズ株式会社」でSNSメディア事業を執行役員として率いていた頃、2021年10月です。毎年150~200%成長という勢いで、いわゆる“攻め”がうまく回っていました。ところが、あまりのスピード成長に組織が追いつかず、私はずっと「このまま突っ走って大丈夫かな?」という漠然とした不安を抱えていたんです。そういった組織やサービスの不安を抱えながら2022年の事業計画を立て始める、そんなタイミングで本書と出会いました。本書を手に取り、「守りも全方位で考えないと、事業がポキッと折れる瞬間がくるかもしれない」というメッセージに触れ、深く納得。翌年の事業計画に「守りの強化」を軸として組み込むことにしました。具体的には、早めの採用や権限移譲サービスや業務フローのバックアップ体制づくり利益をしっかり確保して次の投資へ回す仕組みといった施策です。結果的に、組織がより安定し、現場スタッフの負荷も減少。事業が規模拡大しても、売上だけでなくチーム全体の成長が加速する形に変わっていきました。■経営トップが2ヶ月の育休取得、それでも売上は伸び続けたさらに大きかったのは、私自身が2ヶ月間の育休を取得できたこと。2021年10月に本書に出会い、2022年4月に第1子出産予定だったこともあり半年間の準備期間がありました。「この守りの経営を意識して、半年かけて守りを強化し、僕が休んでいる最中にも組織の成長が止まらないようにするぞ!」と意気込んで、権限委譲や仕組み化、リスク対策を集中して進めることができました。ふつう、急成長中の事業トップが数ヶ月も不在になるのは難しいと感じますよね。でも「守りの経営」を実践した結果、私が抜けても組織がしっかり動く仕組みが整い、むしろ私の留守中でも前年同月比150%以上の成長を維持できたんです。 (現場のメンバーにはもちろん負担はあったと想像はしますが、実際2ヶ月の間でZOOMのミーティングをしてもいいとおもってもののほとんど開催はせず穏やかに過ごせました。)これはまさに「守り=攻めを加速させる土台になる」という本書の考えを、体感的に学んだ事例でした。守りが強いと、誰かに依存しすぎないからこそ組織として柔軟に回り、変化に対応できる。“経営者がいなくても回る”なんて、究極の理想が叶ったのは、この本との出会いが大きかったと思っています。■なぜ起業家におすすめなのか?どんな起業家におすすめなのか?1. 成長フェーズの起業家・経営者急激に伸びている会社は、意外にも「守りの弱さ」がボトルネックになることが多いです。組織が追いつかず、人材が大量に退職してしまうサービスに改良が追いつかず、顧客満足度が下がる経営トップが不在になると途端にトラブル多発そんな状況を避けるためにも、早い段階で守りの仕組みを整え、権限移譲や採用戦略を計画的に進める重要性を理解できるでしょう。結果的に、本当に大きく飛躍するための土台ができます。2. 停滞している会社の社長ある程度までは「攻め」で成長してきたけれど、最近どこか頭打ちになっている。そんなとき、「もっと攻める手はないか?」と探すのも大切ですが、一度立ち止まって会社のバケツの穴を確認することも必要です。本書を読むと、顧客や取引先が特定の分野に依存しすぎていないか組織の誰か1人が欠けたら立ち行かなくなるリスクはないか資金繰りや利益の確保が“守り”として十分かなど、守りを見直すヒントが次々と得られます。次の成長を仕込むには、先に守りを固めるのが実は近道、という発想です。3. 全体的に経験の浅い、若手経営者特に立ち上げ数年のベンチャー企業だと、「今は攻めどき!」「思い切り走り抜けよう!」という空気感になりやすい。しかし、ビジネスの世界は変化が激しく、想定外のリスクも次々とやってきます。取引先が突然倒産して支払いが滞る社会情勢の変化でターゲット市場が激変する過度な集中投下により、自分自身が体力的・精神的に限界を迎えるそうしたシナリオを“起こりうること”と捉えておくかどうかで、その後の経営者としての余裕は全然違うはずです。攻める中でも「守り」を両立させる視点を早期に身に付けておけば、長期的な事業の成長が見込みやすくなります。ちなみに、よく「売上は全てを癒す」なんて言いますが、あれ、実際には癒されてるわけではなく、「多少ハイになれるから、傷口の痛さに気づかないだけ」だと僕は思います。無視してればやがて傷口は傷んで、膿んでくるのは当然です。癒されていると勘違いせず、優先順位とタイミングを見極めて守りにも積極的に取り組んでいきたいものです。まとめ:守りを磨けば、攻めが加速する『守りの経営』の一番のポイントは、ただ“失敗しないための対策”を列挙しているわけではなく、社会や人の流れをしなやかに取り込み、企業が持続的に発展していくための経営スタイルを示している点にあります。私自身も「守りの仕組み」を本気で導入した結果、さらに高い成長率を維持できましたし、何より経営者が不在でも回しやすい組織が作れたのは大きな財産になりました。もし今、「なんだか停滞感がある」「次の一手が見えない」「急成長してきたけど不安」という思いがあれば、いま一度“守り”という観点で経営を見直してみてはいかがでしょうか。そこにこそ、あなたの会社がもう一段上のステージに進む鍵が隠れているかもしれません。P.S.この本に出会ったのは2021年10月末。当時は「2年後に粗利10億円を目指すぞ!」と鼻息荒く意気込んでいた一方で、約半年後に育休を取得する予定があり、「本当に大丈夫かな…」と強烈な不安を感じてもいました。けれど、これを逆手にとって「半年かけて守りを強化しよう。権限移譲を進め、人に依存しない資産を増やし、投資も回していく。守りの強化こそ、次のフェーズを迎えるキラーカードに違いない!」と奮起できたんです。本書で繰り返し語られる「守りは全方位」というキーワードがあったからこそです。このキーワードが脳内にあるか、ないかで、大きく経営の意思決定、舵取りは変わってくると思います。P.S.S.私がご支援している経営者さん達を見ていても、「攻め」を考えるのと同じ感覚で「どんなリスク対策をすればいいか?」という「モグラ叩き状態」の“守り”になってしまいがちです。穴が見えてから慌てて塞ぐみたいな発想ですね。でも経営の穴は、一度に複数やってくることもあれば、1人では埋められないような大穴が突然空くこともあります。そんな時にベースの守り力がなければ対応すらできません。でも経営の守りというのは割とロジカルに対処が可能であるということが本書からの大きな学びです。だからこそ、権限や顧客の「分散」(経営者1人に業務や意思決定を集中させない)組織や資産への投資による「備蓄」(誰かが抜けても動き続ける仕組みを持つ)社会の流れを読み、逆らわない経営による「流動性」(無理に逆風を突っ切るだけでなく流れや調和を意識する)といった全方位の守りが必要です。初めて守りに取り組む方は「何から手をつければ…」と戸惑うかもしれませんが、この本にはそれを整理するうえでのヒントが詰まっています。今まさに不安を抱える経営者の方には、きっと大きな気づきがあるはずです。おすすめ記事【おすすめ本】内省力を高める!『ひとり会議の教科書』で経営者の思考が変わる【おすすめ本】経営の型を掴む!なぜ私は『起業の技術』をすすめるのか?→書籍紹介系の記事は実はけっこう人気なので、読んでみてください。なぜ経営者は『ロジカル思考だけ』だと行き詰まりやすいのか?経営者が自己犠牲マインドを手放した先にある「静かな、るんるんモード」って何?『なぜ私は4年間、コーチングで「遊びの時間」を大切にしているのか ー 経営者の意思決定力を高める意外な習慣』停滞感気味な経営者必見!実は大きな飛躍の前に起こる2つのパターンとは?