ハイヤーパーパス(higher purpose)とは?──“高次の目的”を意識すると経営はどう変わるのか。こんにちは、エグゼクティブコーチの、野中(のなさん)です。今日のテーマは「パーパス」です。企業が社会全体まで意識した存在意義を定義して経営する「パーパス経営」という言葉が普及する中、最近は「ハイヤーパーパス(Higher Purpose)」というフレーズも目にするようになりました。実はこのハイヤーパーパス、普通のパーパスやビジョンと何が違うの?と思う方もいるかもしれません。ここでは、ハイヤーパーパスがいかに“経営者自身の生き方”を組み込みながら、中長期的な企業成長に影響を与えるかを、Q&A形式で解説してみます。私自身の体験や「感謝と愛情が調和する世界観」とのつながりにも触れますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。スリーセンテンスサマリーハイヤーパーパスとは、企業のパーパスを超えて「経営者自身が何者として地球・社会に貢献するのか」という“高次の目的”を明確にする視点である。経営者自身の内面や幸せを大切にしながら、ステークホルダーや社会との調和を意識することで、短期的な利益を追うだけでなく長期的に事業を加速させることが可能となる。自分自身も含めた全ステークホルダーの間に「感謝や愛情」で満たされることを意識することで、結果的に“全員がハッピー”なエネルギー循環が生まれる。結果的に、企業も経営者もより大きな成功と豊かさを実感しやすくなる。ざっくり図解こちらQ1. そもそも「ハイヤーパーパス(Higher Purpose)」って何? 普通のパーパスとどう違うの?A: パーパス経営で言われる「パーパス」は、主に企業の存在意義や社会的使命を指しますよね。「うちの会社はこういう社会課題を解決します!」「お客様と社員を幸せにします!」という感じで、企業文脈にフォーカスするのがパーパスの一般的イメージ。このパーパスは「持続的発展できる会社とは?」「社会に応援される会社とは?」といった疑問に答える形で存在意義をアップデートする形で言語化されていったのが特徴的でした。一方、ハイヤーパーパスは企業のステークホルダーの一人である「経営トップ自身の在り方」も深く関係してきます。経営者個人の意識レベルが、“自分・自社さえ良ければ”から*“地球規模で調和を作りたい”*へ拡張していく。そこに「宇宙的視点」「高次の自分(ハイヤーセルフ)」などスピリチュアルな要素が加わることもあるけど、本質は「自社の枠を超えて、全ステークホルダーや地球社会を巻き込むような壮大な目的を持つ」こと。要するに、*パーパス(企業のWhy)に加えて、ハイヤーパーパス(経営者個人の高次のWhy)*まで取り入れると、ビジョンがいっそう強力になるというわけです。Q2. どんな文脈や背景から生まれた言葉なの?A: 背景としては、3つです。「パーパス経営」に物足りなさを感じる流れ企業の使命を語っても、トップ自身が心底コミットしていなければ形骸化しがち。 そこで「そもそも社長は何を目指して生きてるの?」「どんな価値観で世界に貢献したいの?」という視点を足す必要がある。意識の拡張(マインドフルネスやスピリチュアルの普及)経営者が自己探求や瞑想を通じて、「地球規模で考える方が長期的に良いのでは?」「自分・自社と、他者・他社・社会を分けて考えない方が良いのでは?」という気づきを得る動きが増えている。 その中で「企業の存在意義+経営者個人の高次の目的」がセットになった概念としてハイヤーパーパスが語られやすくなった。ビジョンや理念だけでは足りない“経営者の本気”ビジョン(未来像)や理念(価値観)も大事だけど、それらを実践していくためにはトップの覚悟や情熱が不可欠。 “高次の目的(Higher Purpose)”は、まさにその「経営者の生き方レベルでのコミット」を要する、という点で特徴的です。Q3. ビジョンや理念とどうニュアンスが違うの?A: ビジョンは「将来こうなりたい」という未来志向、理念は「これが私たちの価値観や信条」という軸ですよね。ビジョン: 未来図。数年後・数十年後に達成したい姿。理念: 「うちは正直・誠実を大切にする」など、行動の基盤となる原理・価値観。ハイヤーパーパスは、これらを包含しつつ*「経営トップ自身の生き方・あり方」と強く結びついている*のが大きな違いです。「自分は人生を通じて何者として在りたいか?」「その在り方と会社経営をどう融合させるか?」という、もっと根本的な問いを扱うため、個人的な使命感や地球視点のテーマも含まれてくるんですね。Q4. ハイヤーパーパスを持つと、中長期の経営にどう影響するの?A: 簡単に言うと「ブレない軸ができる」し、「外部のニーズだけに振り回されない」強みがあります。経営トップが“地球規模で何をしたいか”を本気で意識すれば、多少の業績の波や環境変化にも動じにくい。数値目標だけ追うと、景気や競合に左右されがちだけど、“自分の高次の目的を実現する”という軸があれば、どんな局面でも柔軟に行動できる。結果、従業員や顧客も「この会社は本気で長期的な価値創造をしている」と感じ、エンゲージメントやロイヤルティが高まり、中長期の安定成長につながりやすいんです。Q5. 野中さんのいう「感謝や愛情が調和する世界観」とどう連動してるの?A: 私(野中)のコーチング理念としては、「全ステークホルダー(社員、顧客、パートナー、地域、さらには経営者自身)の間の矢印が感謝や愛情で満たされる」世界観を目指しています。ハイヤーパーパスも同じ文脈で、自分が何を大切にして、どう世の中と調和したいのかが明確になるからこそ、各ステークホルダーとの良い循環が生まれる。「経営者が外側のニーズばかり追うのではなく、自分の使命や喜びと合致することで、結果として相乗効果が出る」という点で、ハイヤーパーパスはまさに私の世界観と相性がいいんですね。Q6. 経営トップ自身の生き方を融合させるなんて、新しい視点だけど本当に有効?A: 従来、「社長は株主の代理で利益最大化に責任を負うポスト」という見方が強かった。一方、近年は*“経営者の在り方”が会社全体に大きく影響する*という認識が広がっています。企業価値を高めるにも、イノベーションを起こすにも、経営トップがやりたいこと・本気で情熱を燃やせるテーマかどうかが極めて重要。だからこそ「自分自身が幸せでいいし、自分のこだわりや情熱を思う存分発揮していいんだ」というハイヤーパーパスの考え方が、むしろ経営資源として大切なんですね。お客様や株主など外部のニーズに追われるだけだと、経営者が疲弊しやすい。その結果会社も停滞しがち。でも、経営者自身が“これが私の高次の目的だ”と腑に落ちていると、エネルギーが湧き、周りも巻き込める。Q7. われわれ経営者にとって、ハイヤーパーパスを持つメリットって何?A: いくつか挙げてみます。“ブレ”が減る 環境変化や競合に惑わされず、「自分の使命を貫く」スタンスが強化され、迅速な決断がしやすい。長期的視点での成長が期待できる 単発の売上や利益だけじゃなく、ステークホルダーとの強固な信頼をベースに継続的に企業価値が高まる。リーダーが幸せでいられる 自分の人生理念と仕事が一致しやすいから、自己犠牲感が大幅に減り、モチベーションを保ち続けやすい。共感とファンが生まれる 経営者の“本物の想い”は伝わりやすく、社員や顧客も「この人と一緒にいたい」と思ってくれる。Q8. 実際、どうすればハイヤーパーパスを持つ第一歩になるの?A: すごくシンプルに言えば、自分に「なぜ経営をしているのか?」を問うところから始まります。「自社のビジョン」だけでなく、*「私は何をしたいのか?」「どう生きたいのか?」*を真剣に考えてみる。さらに「その想いと社会・地球のニーズが重なる部分」を見出せれば、ハイヤーパーパスが形づくられやすいです。実務的には、自分の価値観や喜びを棚卸し(趣味や過去のワクワク体験を振り返る)社会や業界の課題をリサーチ(どこなら自分の才能を最大限活かせる?)“これだ!”と思う交点をビジョン化日々の経営判断で常にそのビジョンと照らし合わせるこうしたプロセスが有効だと思います。Q9. なぜハイヤーパーパスを意識できると停滞脱却しやすいの?A: 経営が停滞する要因のひとつに、「やる気はあるけど、結局『外側の要求』に振り回されて自分を見失う」パターンがあります。例えば、マーケットの声ばかり聞いて、経営者自身が興味ない分野に参入→モチベーション続かず失速……みたいなケース。ハイヤーパーパスを設定していると、*「自分はこれを成し遂げたい。そこに社会のニーズをどう合わせるか?」*という逆転の発想になり、ブレにくいしワクワク感が持続する。また、社員や顧客に「この経営者、内側から熱量がある!」と感じてもらえるため、賛同者が集まりやすく、停滞感からの突破口が見つかりやすいのも特徴です。Q. もう少し理解しやすくするには? 日本の“多神教的な自然観”をヒントにしようA. ハイヤーパーパスというと「宇宙的」とか「スピリチュアル」と思う方が多いかもしれません。でも実は、日本には古くから*「八百万の神」「万物に魂が宿る」という多神教的発想がありますよね。森や岩、あらゆる自然に神性を見出すこの世界観は、「すべてがつながっている」「全体の循環を大切にする」*というハイヤーパーパスの考えとすごく親和性が高いんです。あとは「三方よし」のように、全体の調和を意識するようなワードも日本には古くから存在しますね。全体の調和っていうのはそういうイメージの拡張で、地球レベル、宇宙レベルにまで視点を広げていくイメージです。たとえば、稲盛和夫氏が説いていた「宇宙の法則」「心を高める経営」も、まさに“自分と周囲は不可分”という感覚に基づいた哲学ですよね。経営であっても、“自分がどう在りたいか”と“地球レベルで他者や自然と調和する視点”を両立すれば、企業が長期的に繁栄し、社会にも大きく貢献できると稲盛氏は体現してきました。日本に根付くこうした自然観や多神教のマインドを踏まえると、ハイヤーパーパスも「突飛なスピリチュアル」ではなく、*“伝統的な調和観を経営に活かす”*というイメージで捉えやすいのではないでしょうか。おわりに──「自分を犠牲にしなくてもいい経営」を目指す経営者だからといって、株主や外部ニーズばかりを追いかけて自分を犠牲にする必要はありません。むしろ、トップ自身が幸福感と使命を感じられる経営スタイルのほうが長続きし、結果として社会にも大きく貢献できる。ハイヤーパーパスは、その“経営者個人”と“地球規模での価値創造”をつなげるコンセプトです。ちょっとスピリチュアルに感じるかもしれないけど、ポイントは*“調和”。経営者が自分の魂の声(内なる声)に正直になりながら、全ステークホルダーに感謝や愛情の矢印を向けられると、想像以上の加速が起きるんです。数字だけで悩んでも停滞を突破しにくいときこそ、「私は何者で、この企業と社会にどう関わりたいのか?」*をじっくり問い直してみてくださいね。もしその過程で何かつまづいたら、私のコーチングでも「本質の探求」や「内面のアップデート」を一緒にサポートできます。ハイヤーパーパスに興味を持った方、ぜひお気軽にご相談ください。PS:私自身(NonaCanvas代表・野中祥平)のハイヤーパーパスもともと私は「経営を10倍加速させる」というミッションを掲げ、経営者の皆さんを支援していました。でも自分と対話すればするほどに、「ただ数字を伸ばすためのやり方を教えたり、コーチングをするだけでは、自分の生き方・本質と本当に一致しているとは言えない」と気づいたんです。そこから“世の中を明るく照らす経営者を増やす”という大きな視点へとシフトしました。だからこそ、ただコーチングセッションを提供するのではなく、僕自身が探究研究マインドでコンテンツを発信したり、インナーモチベーション診断などの開発にも精を出して取り組むことができています。結果、会社(NonaCanvas)で提供するコーチングやコンテンツも、“経営者が自分らしく本質を追求し、心地よく業績を伸ばす”ことを最優先にデザインするようになりました。私自身がそうありたいからこそ、*数字の成功だけでなく「経営者本人が心から幸せになる経営」*を一緒に創りたいんです。これが私のハイヤーパーパス──経営者の内面と事業の成長を融合し、世界全体のエネルギーを底上げするための道なのだなと思います。参考文献What is higher purpose, and why is it such a critical quality for leaders and entrepreneurs?京セラフィロソフィ 稲盛 和夫 (著) おすすめ記事2025年・新時代のリーダー論「経営者メンタル3.0」とは?〜愛情、感謝、調和がキーワード〜【メンタルケア】マイナス感情に揺さぶられてしまう経営者さんに「過去の自分への手紙」をおすすめする3つの理由とは?【音声】「前年比◎%成長にとらわれて、自分を見失う」エグゼクティブコーチRADIO/経営者あるある#002