こんにちは。株式会社NonaCanvas代表・エグゼクティブコーチの野中祥平です。2月16日にTOKYO創業ステーション丸の内で開催された、25歳以下の若手起業家を目指す方々向けのワークショップ。その内容を3回に分けてお届けしています。ここまでの前編・中編では、私の経営経験や大学時代の失敗談を交えながら、「起業をするなら '相談しながら軌道修正する' 姿勢が大事」という話を進めてきました。前編記事サマリー:私の自己紹介と「なぜ相談が重要か」を、大学時代や赤字事業再建のエピソードを通じて紹介。中編記事サマリー:相談しないことでどんなデメリットがあるのか、起業支援施設をどう活用すればいいのか、実際に相談するときの心構えを詳しく話しました。そして今回の 後編 では、実際にイベントで行った ワークショップパート にフォーカスします。ここでは、 「相談しながら軌道修正する前に、自分で脳内を整理するフレームワーク」 を体験してもらいました。このワークショップは、参加者同士のディスカッションで “思考を外に出す練習” をするのが狙いです。最後には 参加者の声 や、私からのメッセージも載せていますので、ぜひ参考にしてみてください。ワークショップパートの目的 〜 なぜこのワークショップをするのか後編の中心となるのが、*「ワークショップパート」*です。前編・中編でも繰り返してきたように、起業やビジネスにおいて「相談すること」はとても大切ですが、 相談する前に自分の脳内を整理できているか どうかが成果を左右します。以下では、このワークショップの 目的 と 背景 をまずお伝えします。■ワークショップパートの目的脳内を“可視化”し、相談しやすい状態をつくる具体的に「理想は? 今の課題は? なぜその課題が気になる?」「行動は?」と順を追って考えることで、頭の中がスッキリまとまりやすくなります。“とっちらかっている”状態だと、周囲に相談しても曖昧なまま終わってしまいがち。そこを 質問リスト でクリアにしていきます。軽い気持ちで “人に話す” 練習をする大事なのは「まず話してみる、吐き出してみる」こと。完全に整理できていなくてもOK。実際に他者と会話しながら進めることで、 自分でも気づいていなかったアイデア や 不安 を発見できる。参加者同士が “悩みやアイデア” をシェアし合うお互いにフィードバックを交わすことで、思考がさらに深まったり、新たな視点が得られることも少なくありません。■なぜこのワークショップをするか相談は受ける側からすると、「できれば相手の役に立ちたい」「いいアドバイスをしたい」という想いがある反面、脳内がまとまっていない相談をされると、何から話していいのか分からず雰囲気が悪くなるケースもあるんです。「うーん…で、結局何が聞きたいんだっけ?」 となってしまい、成果に繋がりにくい。せっかく相手の時間を使うなら、最低限の情報整理はしておきたい。このワークショップは、そうした “相談の前の脳内整理” をみんなで軽く体験することで、相談しやすい状態づくり を学んでもらうことを狙っています。実際に私(野中)のコーチング知見から 「質問リスト」 を用意しているので、それに沿って話すだけでも頭がスッと整理されるはずです。野中コメント:「相談は “受け手” の時間も使わせてもらう行為。最低限、自分が何をどうしたいかを整理しておくと、相談にのってくれる人との対話がスムーズになり、より良いアドバイスをもらいやすくなるんです。」体験してもらう内容 ~ 10ステップの“思考整理フレームワーク”今回のワークショップでは、*「相談する手前で脳内を整理する」*ために、下記の 10ステップの質問リスト を使いました。上から順番に自分の思いを言語化していくと、 「理想」「課題」「背景」「具体化」「点数の理由」「アクション」などが自然と整頓され、“相談しやすい状態” をつくることができます。■10ステップの質問リスト(理想)「あなたが実現したい理想や目標は何か?」(課題)「今、気になっている課題は何か?」(背景)「なぜそれが気になっているのか?」(具体化)「課題が解決した『理想の状態』とは、どんな姿か?」(現状点数)「理想を100点とするなら、今は何点?」(点数の理由)「その点数なのはなぜ?」(解決策模索)「理想に近づくには、何が必要だと思う?」(他者リソース)「誰に何をお願いしたい? 周囲のリソースをどう使う?」(アクション)「今週できる具体的一歩は何?」(気づき)「やり取りで得たもの、改めて感じたことは?」(聞き手のフィードバック)最後に聞き手(ペアの相手)から簡単に感想・気づき・励ましなどを伝えてもらうと、相談者の中でも*「さらに整理が進む」*というメリットがあります。■このフレームワークで思考整理すると?相談の質が上がる「どこが課題なのか」「理想像は何か」が具体的になるので、アドバイスをもらいやすい。相談が怖くなくなる自分なりに順序立てて話せるため、「とっ散らかってるかも…」という不安が減る。モヤモヤを“外化”する習慣がつく実際に声に出して人と話すことで、自分の中でも漠然とした悩みが明確に見えてくる。野中コメント:「書き起こしの作業に近い感覚ですね。頭の中でループする悩みを言語化し、順を追って整理することで 'あ、ここを相談すればいいんだ' とはっきり分かるようになります。」講師実例:コーチング起業時の野中の場合皆さんにイメージを掴んでいただくため、私と野上さんで実演をお見せしたいと思います。例として、2022年にコーチング起業を考えていた当時の私の状況でシミュレーションしてみましょう。(※以下、Q&A形式での実演)理想や目標は? 「半年後にコーチとして独立をして、月50万円以上稼ぐことを目標にしています」今気になっている課題は? 「これまでボランティアや1万円程度の低単価でコーチングを提供してきたので、月50万円以上をどう稼げばいいのかイメージが持てていません」なぜそれが気になっている? 「子どもが生まれたこともあり、家族をしっかり養っていきたい。上場企業の執行役員というポジションを捨てて起業するからには、きちんと稼ぎたいという思いがあります」課題が解決した理想の状態は? 「月50万円以上稼げるイメージが具体化し、自分のコーチとしてのコンセプトが明確になっている状態。お客様との出会い方についての不安がない状態です」理想100点なら今何点? 「20点くらいです」その点数の理由は? 「2-3年のコーチング経験があり、自身もコーチングを受けながら事業を10倍成長させた経験もある。ただし、独立して十分な収入を得られるイメージはまだ持てていません」理想に近づくために何が必要? 「まず、これまでコーチングしてきたお客様にインタビューして、私のコーチングの価値を明確にしたい。また、コーチとして独立して稼いでいる人をメンターとして見つけたいと思っています」誰に何をお願いしたい? 「過去のお客様に、インタビューをさせていただきたいです」今週できる具体的一歩は? 「過去のお客様リストを見直して、3人声をかける人をリストアップし、今日中にメールかLINEで連絡を取ります」やりとりを通じての気づきは? 「最初はイメージが漠然としていましたが、一歩目のアクションが具体化できて、前に進める気がしてきました」(※野上さんからのフィードバック) 「最初は不安そうでしたが、質問に答えていくうちに表情が明るくなっていきましたね」なお、これはかなりスムーズな例です。普段はこれほどスラスラ答えが出てくるわけではありませんので、皆さんはご自身のペースで考えていただければと思います。講師(野中)の実演を見た後、参加者同士で 「10ステップ質問リスト」 を使いながらペアワークを行いました。その際、スムーズに対話が進むよう、いくつかのルール を設けています。ここでは、その進め方や注意点をまとめてみます。■進め方の流れ個人で5分ほど“脳内整理”まずはワークシートに、自分なりの理想や課題を書き出してみる。すべて完璧に埋めようとしなくてもOK。分からないところは空欄でも大丈夫。2人1組のペアに分かれて、自己紹介(約1分ずつ)「私は〇〇大学の〇年で…」「会社員です。起業には興味があるんですが…」など、ざっくりでOK。お互いにどんな立場かを簡単に理解してから、本編に入る。相談者と聞き手に役割分担し、“10ステップ”に沿って会話(約10分)聞き手は質問リストを順番に投げかけ、相談者が答える。アドバイスというよりは「質問役に徹する」ことがコツ。気になる点は追加で尋ねてもOK。相談者は直感的に思いついたことをサクサク話すほうが、後のフィードバックが盛り上がる。聞き手からフィードバック「話を聞いて感じた印象」「ここはもっと深掘りしてもいいかも」など、気づいたことを伝える。アドバイスや提案でなくてもOK。「こういうところ面白いですね」といった感想で十分。役割交代して同じプロセスをもう一度時間に余裕があれば、お互いに相談者と聞き手を交代。二人ともが「言語化」を体験することで、思考整理&フィードバックの相乗効果が高まる。■ルール・注意点話し過ぎない/詰め込み過ぎない1人10分程度で区切りがつくよう、リラックスして進める。長々と深堀りし過ぎると、全項目が終わらないまま時間切れになる場合も。質問リストの順番は大まかな目安基本的には「(1)理想 → (2)課題 → (3)背景 → …」という順番だが、途中で自然に脱線してもOK。テンポが合わない場合は調整しながら自由にやってみる。途中で“分からない”“考えたことない”が出ても問題なし無理に埋めようとせず、一旦保留して先に進む。「できないと相談してはいけない」という固定概念を捨て、あくまで“ゆるく”言語化を楽しむ。フィードバックは“上から目線”にならないよう注意励ましや共感、「ここ面白いですね」のような軽い感想で十分。アドバイスしたくなる気持ちは分かるが、まずは相手の考えを受け止めるスタンスを優先する。野中コメント:「相談するときって『結論を出さなきゃ』ってプレッシャーがある人が多いんですが、まずはこのフレームワークで “脳内整理” するだけでも大きな進歩。ぐちゃぐちゃの頭の中から “これだけは今週やろう” と行動に繋がるだけでもOKです。」参加者たちの声:「言語化」から生まれた気づき思考を外に出すことで見えてきたもの「今日のワークを通して、自分に足りないところや、今後アクションできるところが明確になりました」書けない、から書ける、へ「最初にこの紙を見たときは全然書くことが浮かばなかったんですけど、実際に手を動かしてみると意外と書けて。言語化することの大事さを実感しました」聞き手として得られた学び「自分とは違う見方や、ゴールを持っていたり、アプローチの仕方が異なっていたりして、とても刺激になりました」他者の視点で見えた自分の価値「数値目標は出してはいるものの、まだ達成できていないし、始めたばかりで0円の状態。でも、動き出しているだけでもすごいと言ってもらえて。そして人生の最終ゴールが決まっているということ自体、それだけでもすごいんだと気づかされました」ワークショップを終えて:整理から行動へ「整理」という最初の一歩このワークショップで体験していただいたのは、相談の手前にある「整理」のステップです。全ての答えを出す必要はありません。「今こんな風に考えていて、こういう状態なんです」という整理ができれば、そこからアドバイスをもらいやすくなります。継続的な実践のために日常的にこの質問項目を使って、時々自分の考えを整理してみてください。それを誰かに話してみる。そんなサイクルを回していけたらと思います。野中からの最後のメッセージ:今日をDAY0にせっかくの機会です。今日を「DAY0」として、何か一つ決断をして帰っていただきたい。私自身、20代の頃によくやっていたのは、セミナー後にカフェに立ち寄り、1-2時間ほど一人で振り返る時間を作ること。家に帰って着替えてリラックスしてしまうと、せっかく高まったエネルギーが落ちてしまいがち。その前に、新しい決断や行動の種を仕込んでいく。ぜひ皆さんも、今日という日を、新しい一歩を踏み出すきっかけにしていただければと思います。今回のイベントレポートのまとめイベントレポートは全部で3つあるので、合わせて確認してみてください。前編記事:【前編】(イベントレポート)【U25限定】若手起業家直伝!たった2時間で「起業準備のコツ」が学べるワークショップ】 中編記事:【中編】(イベントレポート)【U25限定】若手起業家直伝!たった2時間で「起業準備のコツ」が学べるワークショップ】 後編記事:【後編】(イベントレポート)【U25限定】若手起業家直伝!たった2時間で「起業準備のコツ」が学べるワークショップ】 参考リンク東京創業ステーション