「選択と集中しなければ」って言われるたびに、なんか息苦しさを感じるんだよな...。ロジカルに戦略立てても、現場がワクワクしてくれないし、本当にこれで合ってるのかな?そんな経営者やビジネスリーダーの方に、この記事を読んでいただきたいと思います。こんにちは、エグゼクティブコーチの野中祥平です。「選択と集中が大切」と言われるたびに、なぜか息苦しさを感じてしまう経営者・ビジネスリーダー必見。多くの経営者が当たり前のように実践している「選択と集中」というアプローチが、なぜ現代の経営環境で逆効果になってしまうのか?なぜロジカル思考に偏りすぎると、現場の士気や実行力が下がってしまうのか?赤字事業を5年で10倍成長させた実経営経験を持つエグゼクティブコーチの野中が、自身が「選択と集中の罠」にハマった失敗体験と、そこから抜け出した実際のプロセスを公開します。この記事で学べること✅ 「選択と集中」で陥りがちな3つの罠とは?✅ なぜロジカル思考が現場の実行力を下げるのか?✅ 「動画戦略」「アプリ開発」で失敗したリアル体験談✅ 選択と集中に縛られない3つの思考転換術✅ 「逆に」思考で2年かけて勝ち筋を見つけた方法✅ AI時代の直感と論理を統合する経営手法スリーセンテンス要約「選択と集中」は投資家への説明は簡単だが、ロジカル偏重で現場の士気が下がり実行力不足を招く古いビジネス手法である。市場トレンドをロジカル分析した結果「説明しやすい戦略」に着地しがちだが、実際は現場との乖離や機会損失を招く危険性が高い。成功する経営者は「逆に思考」「発散と収束」で直感と論理を統合し、軌道修正し続ける柔軟な経営判断力を身につけている。多くの経営者が陥る「選択と集中」の3つの罠━━━━Q: 「選択と集中」って、なぜ問題があるのでしょうか?経営セオリーとして当たり前だと思っていました。野中:実は僕自身、この「選択と集中しなければ」という固定観念に縛られて、大きな遠回りをしてしまった経験があります。確かに限られた経営資源を効率的に使うという点では合理的なんですが、現代の経営環境では逆に足かせになることが多いんです。特に問題なのは、「選択と集中をしよう」と決めた瞬間から、多くの経営者が陥る典型的な思考パターンがあることです。僕がSNSマーケティングの上場企業「トレンダーズ株式会社」で美容SNSメディア「MimiTV」の買収・経営統合を担当していた2018年に、まさにこの罠にハマってしまいました。罠1:思考優位・ロジカル偏重による現場との乖離━━━━Q: 具体的には、どんな思考パターンなのでしょうか?野中:まず現状分析から始まります。「外部環境を分析しましょう」「現状のリソースを整理しましょう」「最も生産性が高くて最短で最善な道を見つけましょう」という流れです。当時は「動画ブーム」の真っ只中で、世の中のWEBメディア(インターネット上の情報サイト)はこぞって「動画戦略だ!」と動画制作に経営資源を集中していました。これって典型的な「選択と集中」アプローチなんです。同時に「アプリでユーザーを囲い込むのが大事!独自データを持っているのが大事!」と、アプリ開発に集中して広告費をかけてユーザー集客するメディアも多かった。ビッグデータというトレンドワードの影響もあったと思います。どちらもデータと論理に基づいた「説明しやすい戦略」でした。投資家にプレゼンすると「なるほど、確かにそれは正しい」と納得してもらえる。でも問題は、その戦略を実際に実行する現場がワクワクするかどうかは別問題だったことです。罠2:直感と違和感の軽視による機会損失━━━━Q: ロジカル思考の何が問題だったのでしょうか?野中:「データ的には正しいから」という理由で、現場の違和感や直感を無視してしまうことです。実際、蓋を開けてみると動画制作にこだわっていたメディアはどこも行き詰まっていました。「あれ、動画制作にこだわっても、どうやってマネタイズ(収益化)するんだっけ?」「タイアップ広告を出稿してくれるメーカーさんは、本当に動画を作って欲しいと思ってるんだっけ?」という根本的な疑問が浮上してきたんです。アプリ開発に集中していたメディアも同様で、広告費をかけてユーザー集客をしても、継続的な収益モデルが見えてこないという課題に直面していました。つまり、みんなが「正しい」と思っていた戦略が、実は地獄の道だったんです。罠3:変化対応力の低下と組織の硬直化━━━━Q: なぜ「正しいはず」の戦略がうまくいかなかったのでしょうか?野中:前提条件が急速に変わってしまったからです。動画ブームやビッグデータブームという「今のトレンド」に基づいて戦略を立てたものの、市場の現実はもっと複雑でした。「選択と集中」のアプローチだと、一度決めた戦略を変更することに心理的な抵抗が生まれます。「投資家に説明した手前、簡単には方向転換できない」「せっかく決めたことだから、もう少し続けてみよう」という思考になりがちです。でも変化の激しい時代には、「決めたことを守る」よりも「現実に適応する」方が重要なんです。実体験:「逆に」思考で地獄の道を回避した話━━━━Q: 野中さんは、どうやってその状況を打開されたのですか?野中:僕は当時、「逆に」という思考を意識的に使っていました。みんなが同じ方向に向かっているときこそ、逆を考えてみる習慣があったんです。多くのメディアはアプリ開発をして広告費をかけて、という地獄の道をいきがち → 逆に、自分たちはSNS主体で分散型だからこそ身軽な道(固定費が少なく、変化に適応しやすい道)をいかないと多くのメディアはとにかく動画のクオリティにこだわって、地獄の道をいきがち → 逆に、動画じゃない道を探さないと未来はない実際、MimiTVを買収した時点で既に赤字だったので、「親会社の営業力で、まあなんとかなるだろう」という楽観的なストーリーで進めていました。でも買収直後1ヶ月で「動画戦略では経営はうまくいかない」ということが明確になったんです。━━━━Q: それで、どんな行動を取られたのでしょうか?野中:必然的に「選択と集中」モードから「発散と収束」モードに移行せざるを得ませんでした。つまり、新しい勝ち筋を探す探索モードに入ったんです。具体的には:店頭販売に全振りしてみたりTikTok(動画SNS)に手を出してみたりTwitter領域であれこれ模索してみたり確かにリソースは分散しました。でも限られたリソースの中で細かく小さく実験をしていくことで、見えなかった景色が見えるようになっていったんです。業界の課題に対する解像度が上がり、自分たちが解決すべき顧客の課題も明確になっていった感じです。━━━━Q: 最終的には、どんな戦略にたどり着いたのですか?野中:「動画じゃなくて、Twitterに勝ち筋があるかもしれない」という直感を活かして探索していたところ、「Twitterにいる美容オタクコミュニティを起点とした評判形成・話題化・評判定着の一連の流れを作ることで、店頭売上を動かす戦略」にたどり着きました。ただし、これには2〜3年の月日が必要でした。もしロジカル分析だけで一発で答えを導き出そうとしていたら、絶対に見つからなかった戦略です。この経験から学んだのは、投資家に説明がしやすいことと、実行面・継続性に問題がないことは全く別物だということです。一見正しいように見える経営戦略でも、現場の実行力や市場の現実とのギャップがあると、結果的に遠回りになってしまうんです。「選択と集中」に縛られない3つの思考転換術━━━━Q: では、どうすれば「選択と集中の罠」から抜け出せるのでしょうか?野中:僕が実際に使って効果があった3つの思考転換術をお伝えしますね。これらは今日からでも始められる実践的な方法です。転換術1:「逆に」思考で競合と差をつける━━━━Q: 「逆に」思考を、具体的にはどう使えばいいでしょうか?野中:みんなが普通こう考えそうだよね、ということをあえて出した上で、その逆を考えてみる思考法です。MimiTVの例で言えば:「動画戦略が正解」と みんなが思っている→ 逆に、動画じゃない道って何だろう?「アプリでユーザー囲い込み」が みんなの常識→ 逆に、分散型で身軽に行く道って何だろう?この思考法を使うことで、一見馬鹿げているんだけど、よくよく聞くと戦略的には合っているものが見えてきます。実際、意外とみんながやりたがらないことほど、競合が少なくて成功確率が高いんです。他の業種・業界での成功事例を掛け合わせるヒントも得やすくなります。転換術2:半年後・1年後のストーリーパターンを複数想定する━━━━Q: ストーリーパターンを想定するとは?野中:「最もそれっぽい戦略」を立てた後に、必ず複数の未来パターンを具体的に妄想してみるんです。パターンA:めちゃくちゃうまくいったときパターンB:そこそこうまくいったときパターンC:あんまりうまくいかなかったときこの3つのパターンを想像してみると、「あれ、この戦略の幅って意外と狭くない?」「なんかワクワクしなくない?」という違和感に気づきやすくなります。MimiTVの動画戦略で言えば:パターンA:動画がバズって認知度アップパターンB:そこそこ再生数は取れるパターンC:制作コストばかりかかって収益につながらないこの想定をした時点で「パターンCのリスクが高すぎるし、パターンAとBでも根本的な収益モデルが見えてない」という問題に気づけたはずなんです。転換術3:「やるべきことはやった上で」宣言━━━━Q: 方針を変更するとき、社内にはどう説明すればいいでしょうか?野中:いきなり「何も方針を決めません」というのは現実的ではないですよね。そこで僕がおすすめするのは、「やるべきことはやった上で、ひらめきや直感、違和感を大切にしていきます」と宣言することです。MimiTVでも、経営会議のスタイルを変更しました:定例報告みたいな型にハマったフォーマットをやめる現場の気づきや違和感をシェアすることに重きを置くディスカッション中心の運営に変更重要なのは、月1回の堅い報告会ではなく、毎日・毎週のリアルタイムなコミュニケーションです。細かい気づきや違和感を現場から吸い上げることで、「この前提って本当に合ってるんだっけ?」という疑問が生まれやすくなります。AIを活用すれば、この思考プロセスをさらに加速できます。「この違和感って何だと思う?」「この常識って変えられる気がするけど、その歴史的背景は?」といった質問をAIに投げかけることで、思考の回数を圧倒的に増やせます。よくある質問|思考転換の実践で迷うポイント「ロジカル思考を捨てるべき?」という誤解について━━━━Q: 「選択と集中」や「ロジカル思考」自体が悪いということでしょうか?野中:いえ、ロジカル思考自体を否定しているわけではありません。問題は「ロジカル思考だけ」に偏ってしまうことです。MimiTVの場合も、最終的には攻めも守りも両方意識的に強化していく組織強化フェーズが訪れました。そのタイミングでは、ロジカルに穴を埋めたり、問題が起きるたびに根本原因を解決しにいったりしました。僕が提唱している「経営者メンタル3.0」のテーマは、西洋的なロジカル思考と東洋的な全体調和思考の統合です。つまり、論理も直感も両方大切にするということです。「リソースが分散しませんか?」という不安について━━━━Q: 複数の実験を同時に行うと、リソースが分散して効率が悪くなりませんか?野中:確かにMimiTVでもリソースは分散しました。でも、限られたリソースの中で小さく実験することがポイントです。大きな投資をする前に、小さく試して手応えを確認する。手応いがなければ早めに撤退し、手応えがあるものに徐々にリソースを集中していく。このサイクルを回すことで、結果的には最短ルートで正解にたどり着けるんです。「最初から正解を当てる」のは無理がありますが、「小さく試して軌道修正する」ことで正解に近づいていくことは可能です。「具体的な実践方法」について━━━━Q: 「探索モード」を実際に始めるとき、どんな体制で進めればいいでしょうか?野中:新しい種まきプロジェクトを始めるときは、ちゃんとプロジェクト責任者を立てて、プロジェクトごとに進捗や狙いを定めて、期日も決めて、状態目標と定量目標の両方を設定してください。重要なのは、月1回の定例ミーティングで報告するようなお堅い感じではなく、毎日・毎週のコミュニケーションを大事にすることです。リアルタイムで気づきをシェアする雑談チャットを運用したり、細かい違和感や直感も現場から吸い上げる仕組みを作ってください。「この前提って本当に合ってるんだっけ?」「この前提って今後変わっていくんじゃないか?」という疑問を大切にして、今まで変数じゃないと思ってたものを変数だと思ってみる。そういう思考の柔軟性が大切です。━━━━Q: AIも活用できそうですね?野中:そうなんです!思考と直感を統合させて、「何かここにチャンスがあると思うんだけど何だと思う?」「これが違和感だと思うんだけど、本当にこれって正しいのかな?」「この常識って変えられる気がするけど、そもそもなんでこういう常識になったの?」みたいな形で、AIと積極的に会話していくんです。コミュニケーションを増やす、対話を増やすことで、思考の回数を増やすことがすごく大事だと思います。「選択と集中」の呪縛から解放されて、自分らしい経営を━━━━Q: この記事を読んだ人に、最後にメッセージをお願いします。野中:まず、「選択と集中」って、もしかしたら今の自分たちにとって捨てちゃった方がいい・手放した方がいい常識の一つかもしれないって思ってもらえたら嬉しいです。僕自身、MimiTVの経験を通じて「投資家に説明しやすいこと」と「現場が実際にワクワクして実行できること」は全く別物だということを身をもって学びました。もしあなたが今、「選択と集中」のプレッシャーを感じていたり、論理的すぎる戦略にワクワクできないと感じているとしたら、それは成長のサインかもしれません。「みんながやりそうなこと」ではなく「自分たちらしいこと」を選ぶ勇気を持ってみてください。その中に、きっと想定外の成長機会が隠されているはずです。ちなみに、このように、既存の常識を疑ったり、今の結果を生み出した前提となる思考の枠組みを壊すことってけっこう難しいです。私のエグゼクティブコーチングは思考の枠組みを疑い、客観視を促し、気づきを育てるスピードを最大化させることができます。こういったプロの力を借りることで変革のタイミングを逃さないということも大事なのでお気軽に頼っていただけたらと思います。┌───────────────────┐ \この記事を読んだ方におすすめ/ 🗣️ 今すぐ状況を変えたい方 →[体験セッションに申し込む] 📚 体系的に学びたい方 → [書籍『経営者メンタル3.0』を購入] 💌 継続的な学びを求める方 → [メルマガに登録する] └───────────────────┘関連記事『選択と集中』が経営を停滞させる理由|AI時代に必要な『発散と収束』思考法とは?経営判断に迷いが生じる本当の理由|ロジカル思考の限界と直感を活かす経営術経営者メンタル3.0がAmazon3部門1位獲得|AI時代の経営者メンタルマネジメント本【実体験レビュー付き】経営者としてコンフォートゾーンを抜け出すコツとは?~探索モードで新しい可能性を見つける方法~ロジカルに考える“最短・最善”が行き詰まったとき、「探索」がブレイクスルーを生む!〜赤字事業を5年で10倍成長させた時の話〜